大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)377号 判決

上告人(原告) 川崎孝四郎

被上告人(被告) 岩手県選挙管理委員会

一、主  文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

二、理  由

訴外当選人館石基治が昭和二六年四月二三日執行の本件町長選挙において同町議会議員であつて、町長選挙についての立補者を制限せられた公務員であるのにかかわらず、これを辞することなく同年四月四日同町長選挙の候補者として選挙長に届出をしたこと及び同人は同月一二日同町議会議長の許可を得て同町議会議員の職を辞し、その証明書を立候補届出期間内の同月一三日選挙長に提出したことは原判決の確定した事実である。そして公職選挙法八九条の規定により立候補の適格を有しない者が立候補の届出をした場合には、その届出は固より違法なものではあるが、その立候補者が立候補届出期間内に立候補者たる適格を有するに至つた場合には、その適格を有するに至つた時から右立候補届出が効力を生ずるものと解するを相当とする。けだし立候補届出期間内に立候補者たる適格を有するに至つた以上、当初の立候補届出を無効としてあらためて届出をさせることは無用の手数でもあり、その必要もないからである。然らば本件において当選人館石基治は前記のように立候補届出当時には立候補の適格を有しなかつたが、立候補届出期間内に議員の職を辞したのであるから立候補者たる適格を有するに至つたのでその時から当初の届出が効力を生ずるに至つたものと解すべきである。従つて右と同一趣旨にいでた原判決は正当であり、論旨はその理由なきものである。

よつて民訴四〇一条、八九条、九九条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。

(裁判官 霜山精一 栗山茂 小谷勝重 藤田八郎 谷村唯一郎)

上告代理人岡本共次郎の上告理由

一、公職選挙法第十九条には地方公共団体の公務員は在職中公職の候補者となることができない。同第九十条には公共団体の公務員は公職の候補者となるにはその職を辞任しなければならないと規定している。

二、本件昭和二十六年四月二十三日執行の九戸郡種市町長選挙に当選した館石基治は、当時同町議会議員であつて公務員であるに拘らず、その職を辞さないで同年四月四日種市町長選挙に立候補し、選挙長出石正武に候補者届をなしたのである。

三、右公職選挙法第八十九条は地方公共団体の公務員がその職を退かずに、自由に立候補が許されるとすれば、その保有する地位と権力を利用することによつて、少くともその地位と権力に伴う影響の下に行はれる選挙であるから、その自由と公正を期することができないから設けられた規定であつて、該規定は単なる立候補の制限の規定ではなくして、被選挙権の要件を規定したものと云はなければならない。従つてその職を辞さないで為した立候補の届出は無効と云はなければならない。

四、種市町長の選挙の立候補者である館石基治が、同町議会議員の公職に在ることは一般周知の顕著な事実であり、しかも選挙長たる出石正武はもと種市村助役、現種市選挙管理委員会委員長、町監査委員であつて、館石の身分地位は尤もよく知つているものであるから、町議会議員を辞任しないで為した昭和二十六年四月四日の同人の立候補届出は無効な届出として却下すべきである。

然るに被上告人はこれを受理して、同年四月十二日に至つて右立候補者館石の同町議員退職の手続がなされていないことを知つて、立候補届出の最終期日である同月十三日に同人から議員退職の証明書を提出させて四月二十三日の選挙を執行した(被上告人の昭和二十七年二月十四日附答弁書第三四項)。そして本訴で館石の町長当選にはこれを無効とすべき違法の点はないと主張する。

五、然しながら第三に述べたように右館石の立候補届出は全然無効であるから、被上告人は右館石が町議会議員を辞任しないことを覚知したならば、右無効の届出を却下して更めて町議員を辞任させた後において、更に立候補届出をなさしむる措置を執るべきであつた。単に町会議員辞任の証明書を徴しただけではその無効な届出を追完補正することができない。従つて館石基治は結局右町長選挙については被選挙資格のない者であつて、同人に対してなされた投票は全て無効であるから同人の当選もまた無効である。

六、原審判決は右館石基治の届出は有効であると解して上告人の請求を棄却したのは、公職選挙法第八十九条同第四十条に違背する不法の判決である。 以上

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